ENZOのはじまり

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ENZOの種

私がこの仕事に就くまで、少々遠回りしました。大学を出て就職して会社員として働いていた自分が、突如職人という世界に転職したのには、私の人生観に変化があったからです。大学を決める頃から自分の中で煮え切らないものがありました。自分が社会に出て何をするか、沢山の選択肢がある中で、私は何を基準にして将来を決めたらいいのか迷っていたように思います。自分の中に道筋が無かったことで、とにかく時間の経過と伴に少しずつ流されて行ったという感じで進学し、一応当時希望していた会社に就職はしました。勿論その時は真剣に考えて決断してきた訳ですが、色々な事を複雑に考え過ぎていたのかもしれません。一応ははりきって働いていましたし、やる気もありました。でも何となく生涯この会社に身をおくような気持ちでは無かったんです。デスクワークが中心でしたから室内にこもりがちな事が多く、また飲みに行くことも多くなりますと、徐々にお腹の辺りにメタボが忍び寄る気配を感じるようになりました。まだ20代でしたが、何やらとても不健康だと感じるようになりました。仕事の内容以前に、生活習慣に違和感を感じました。私自身お酒は好きですし、おいしいものも食べたいので、お酒の席を断る理由はありません。このままでは流されるようにメタボが進行して、持病との闘いが待っているに違いないという危機感を覚えました(少し大げさですが...)。

その頃から人間の身体はどんな活動をするために最適化されているのか?心の安らぎはどこに求めるのか?みたいな事を考えるようになりました。身体は適度に動かす必要があり、極度に動かしたり、使わなかったりすると、不具合が生じてくる。考えることをしなければ脳は退化してしまう。子供と接する時間は出来るだけつくりたい。家庭を顧みることをおざなりにしたくない。結局当たり前の事しか浮かびませんでしたが、今まで複雑に考えていた人生観をもっとシンプルに考えるようになりました。そして何となく私の進む道筋のベースが見えたような気がしたのです。

ENZOの芽

とにかくおてんとさまの下で、身体を使う仕事を探しました。それまで植木や草花には一切関心が無かったのですが、思い切って植木屋さんで働く事にしました。何しろ外仕事は始めての経験だし、植木に関しては何も解っていなかったので、始終親方に怒られっ放しでした。初めは肉体的にきつかったけれど、じきに身体がしまってきてとても身軽で健康的な感じがしてきました。一日中外に出ているなんて子供の時以来かもしれません。この仕事が人間の身体にとって最適かどうかは別として、何となく私個人としては精神と肉体のバランスが保たれたように思いました。実際には肉体労働で身体に不具合が出てしまう事もありますし、歳を負うごとに肉体も老化します。それでも私はバランスをとりながら、時には油を注ぎながら(何が潤滑油になるかわかりませんが)時には気合を入れなおしたり(冷や水にならない程度に)いつまでも動く身体を保ちたいと思っています。

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