バラの誘引について

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バラの誘引について

つるバラの醍醐味は咲かせたい場所に咲かせることが出来ることではないでしょうか。思い描いた景色をつくる魅力は一度味わってしまうと虜になってしまいます。そして来年はもっと良くしたいという希望と欲望。そのためにせっせと冬の作業を行うのも楽しいものです。

誘引は冬にしか出来ない作業です。シーズン中はおいそれと枝の配りを変更することは出来ません。新しいシュートを保護するための結束などは随時行いますが、景色をつくる作業ではありません。

今回はつるバラの景色をつくるための冬の作業「誘引」について書きます。

バラの誘引とは

バラのもつ「頂芽優勢が強い」という性質を利用して、つるバラを沢山咲かせる仕組みが誘引です。本来上に伸びていくツルを横に寝かせることで、なるべく多くの芽を頂芽だと思わせるのです。立っている状態では一番上の芽が頂芽になり、一つの花が付きます。長いつるでも先端部分だけが活動し、下の方は芽があるのですが活動しません。これを横に水平にすると、我こそ頂芽だと言わんばかりに芽が動き出します。この法則に従い、枝を水平に誘引することで多くの花を付けることが出来るのです。
横に広いスペースの方が誘引に適していますが、縦方向の場合はS字に蛇行させることで水平部分をつくることができます。また縦方向では柱状の構造物を利用して、らせん状に巻いていくことで枝を横にすることができます。(オベリスク、ポール仕立て)

水平に誘引することでお花が沢山咲きます(水平もしくは斜め上方向)

誘引の場所(アイテム、構造物)

バラの枝を誘引する場所として代表的なのはアーチですね。他にも壁面やフェンス、パーゴラ、オベリスクなどが定番ですが、誘引したい場所や方向性、イメージに合わせてオリジナルの構造物を考えてもいいでしょう。

アーチ

アーチはつるバラを誘引するには意外にも小さい構造物と言えます。水平な部分が多いほど有利であることは先述した通りですが、アーチには水平部分がありません。よって大型のアーチや奥行のあるアーチの方がより効果的になります。またアーチ部分だけでなく、垂直な部分でも咲かせるコツがあります。

壁面、フェンス

建物の壁面は、大きくなるつるバラに効果的なスペースと言えます。フェンスはある程度の高さが必要ですが、低いフェンスの場合でも枝のしなやかなタイプのバラや匍匐するタイプのバラを使う事で無理なく誘引する事が出来ます。また建物の壁面は南向きの場合が多いですが、逆にフェンスや塀は庭の南側に位置していることが多く、目隠しタイプの場合は日照を検討したほうが良いでしょう。

パーゴラ

一般的にはパーゴラは下から見上げる位置になります。バラの花は日照のある方を向く傾向がありますので、下からは葉だけしか見えない状況になります。出来るだけ隙間を広く取って花が見えるようにするのが良いのですが、枝が下がるタイプのバラを選ぶ方が効果的です。樹勢の強いタイプですと誘引するのも苦労します。花が重くて下を向くタイプのバラも効果的です。なるべくパーゴラの外周に見せ場をつくり、中央は密にしないのが良いかもしれません。

オベリスク、ポール

オベリスクはよほど大きなものでない限り、地植えのバラには効果的でない場合が多いです。高さ2m程度のオベリスクでは、つるを巻いていくには小さすぎます。よほど枝が細くてしなやかなバラでないかぎり、巻いていくのは困難です。巻くというよりは支柱のように使えばバラのタイプによっては効果的に使えるかもしれません。また鉢植えで管理する場合は効果的な場合もあります。

バラの景観をイメージして誘引スペースを準備しよう

つるバラの品種ごとの個性

つるバラはお花の違いは当然ですが、枝の太さ、しなやかさ、伸び方の性質が品種によって違います。狭いスペースなのに大きくなる性質のバラを持ってきてしまうと無理が生じて、管理が大変難しくなります。逆に広いスペースに誘引したいのにあまり伸びないバラを持ってきては意味がありません。このようにバラの品種ごとの性質を理解した誘引計画を立てることで、そのバラ本来の個性を発揮する事ができるのです。

シュラブ樹形
クライミング樹形
ランブラー樹形
匍匐タイプ樹形
シュラブ樹形

ブッシュローズ(木立性のバラ、つるバラではないバラ)を大きくしたような樹形。イングリッシュローズなどでも多いタイプで、自立でも管理できますし、つるバラとして誘引することもできます。ただし枝が太めなので繊細な誘引には向きません。花は中~大輪で繰り返し咲くタイプが多く、バラの風景をつくるというよりは個々の花を愛でるような使い方に向いています。
自立、壁面、フェンス △アーチ 

つるバラの基本形と言えます。枝が良く伸びるのがつるバラの特徴で、一季咲が基本です。開花を繰り返すタイプはそのたびに枝の伸長が停まりますので、厳密にはつるバラとは言えません。主幹は太く、枝を垂直に支えながら伸ばしていきます。広いスペースでおおらかに誘引することで圧巻の景観を演出することが出来ます。

ランブラー樹形

クライミング樹形と同様に枝を長く伸ばしますが、クライミング樹形は枝が湾曲するまでの伸長なのに対し、ランブラー樹形は湾曲した後も伸びる傾向があるため、枝の長さが特徴と言えます。

主幹が直上せずに斜め上方向に伸長します。枝は比較的細くてしなやかなため、低いフェンスや上から枝垂れさせることも出来ます。一季咲が基本で枝は良く伸びるのが特徴です。小型のランブラーという位置づけになります。

シュラブ樹形とクライミング樹形の中間のようなタイプです。繰り返し咲く品種が多いため、枝の伸長は比較的控えめであることからコンパクトに管理できる樹形です。一般的な住宅のお庭では扱いやすいバラです。

誘引する場所に合った品種を選ぶことで、バラの個性をいかすことが出来ます

誘引の手順~剪定

昨年誘引した状態のバラは、面倒ですが一度取り外します。誘引する前に不要な枝を剪定しておきます。剪定する枝は古くなって勢いのない枝は元から外し、昨年の開花枝は芽を3つほど残して切戻します。新しいシュートは枝が出ていないのでわかりやすいですが、昨年開花したシュートは花枝を切戻した短い枝が付いた状態ですが、1本のつる状になります。勢いのあるサイドシュートが出ているつるは新しいサイドシュートを生かして古い方は剪定します。(サイドシュートが出た部分で2又に分かれますが、古い方を切って1本にします)全体的に枝数が少ない場合は分岐した両方とも残しても良いですが、養分は新しいサイドシュートの方に送り込まれる傾向があります。最後に残った枝の葉を全て取り除きます。
(剪定についてはまた別の回で詳しくやりたいと思います。)

誘引の手順~枝配り

葉を落とし、剪定された枝が準備出来たら誘引に入ります。(カイガラムシが付いていたらこの時点でブラシで落とします)
壁面やフェンスの場合は誘引する枝の間隔を20㎝以上にした方が密集し過ぎないで良いでしょう。風通しが悪くなると病気が付きやすくなります。小ぶりなアーチの場合は狭いのであまり多くの枝を誘引出来ませんが、出来るだけ重ならないように枝を配置します。アーチは曲線の頂点を過ぎますと下がってきますが、下向きの枝には咲きにくい傾向があります。まんべんなく咲かせるために反対側からもバラを誘引したいと思いますが、アーチ部分はかなり混み合います。両側から誘引する場合は欲張らずに配置できない枝は切り戻し、アーチ側面で咲かせるのが良いでしょう。曲げる事が出来なくても、頂芽には咲きます。また切戻すことで新しいサイドシュートが誘発されます。頂上付近で新しいサイドシュートが出たとしても、来年は使えませんので、アーチでの誘引は切戻しが大変重要なポイントになります。

剪定で枝を整理して、開花をイメージしながら枝を配りましょう

まとめ

今回はバラの誘引について解説してみました。技術的な面というよりは、お庭につるバラを配置したいと思った時にどんなことを注意した方が良いかといった概要的な内容になりました。またそれぞれの詳しい内容については別の回で解説したいと思います。


誘引はバラのお世話の中でも一番の見せ場ですから、本当に楽しいですよね。開花した景色を見て感無量になりながらも、「来年はもっとこんな感じにしよう!」って期待も膨らんでしまいます。

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